バクの小話 アジアの伝説の生き物?

動物

バクの2つの仕事、森の管理と森林の頂点捕食者

独特の風貌をもつ穏やかな動物であるバク。中南米から東南アジアにかけて熱帯雨林から草原までの多様な場所で暮らす彼らはその生態系に欠かせない存在だ。

バクは5種のみで、そのうちの4種は中南米に生息し、5種目のマレーバクだけが遥かに離れたアジアに生息している。

アンデス山脈の高地に生息するマウンテン・バピルは、低地に生息するバクにはない、密生した毛皮のような被毛を持っている。

中央アメリカに生息するベアードバクは、200種類以上の植物を食べることが確認されている。森全体がビュッフェで世界が天国に見えているかもしれない。

しかもバクは、その大きさと一見ゆっくりしたペースにもかかわらず、天敵がほとんどいない。その理由のひとつは、強靭な皮と、脅威にさらされたときに素早く生い茂る草木や水の中に逃げ込む能力だ。一見何の変哲もない特徴だがかなりの強みである。

バクは、種子散布者としての役割と草食動物ながら頂点捕食者に近い役割という、二重の重要な役割を担っている。その生態的地位はヨーロッパやアジアでの熊などに近い存在とも言える。

彼らは “森の庭師 “として知られている。植物や果実、葉を食べるバクは、種子を摂取し、その種子は消化器官を通過して糞に混じって森の色々なところにまかれるのだ。多様な種を守ると同時に栄養循環の重要な役割を果たしている。

バクのトリビア

象の鼻を短くしたような特徴的で長く柔軟な鼻。その鼻は短いながらゾウのように器用だ。巧みな採食道具であり、葉を掴んだり、枝から葉を引き抜いたり、樹木からジューシーな果実を摘み取ったりといった器用な役割を果たす。

さらには泳ぐときにはこのようにシュノーケルに近い役割を果たす。

泳ぐバク。カバみたい。

生きた化石と考えられてもいる。彼らの系統は約5000万年前まで遡ることができる。つまり、祖先は恐竜の最後を目撃し最初の花が咲き大陸の移動を経験したことになるのだ。

やや豚のようなシルエット、そしてその細長い鼻のせいでアリクイと混同されることもあるが、実際には馬とサイと同じグループの動物だ。奇数の足指とかたい植物を分解することに特化した胃を特徴とする分類群である奇蹄目に属している。

蹄が偶数の偶蹄類の動物は沢山いるが奇蹄類は少ない。歴史的にも人間に身近な動物であるウマ、そして恐竜のようなサイ、もう一つが、あまり知られていないがこのバクという生き物である。

妊娠期間は驚くほど長く、動物界でも最長クラスの約13ヶ月だ。バクの子供は天然のカモフラージュとして機能する愛らしい斑模様の被毛をしている。

生まれたばかりのバクはその特徴的な縞模様と斑点のカモフラージュがある。そしてこうした模様は森林の薄明かりの中で優れたカモフラージュ効果を発揮する。鹿などの斑点と同じで木の葉っぱを抜けた光を見事に衣服の柄としているわけだ。しかしこうした柄は成熟するにつれて変貌を遂げ大人になると無地になる。

バクは比較的がっしりした体格にもかかわらず驚くほど俊敏に泳いで、それだけでなく、更に潜水することもできる。完全に体を沈めて柔らかい水生植物を求めて川底を歩くことができることさえあるのだ。

彼らは意外に俊敏だ。悪路を移動したり、必要なときには素早く移動したりすることができる。

しかもバクは、その大きさと一見ゆっくりしたペースにもかかわらず天敵がほとんどいない。その理由のひとつは、強靭な皮と、脅威にさらされたときに素早く生い茂る草木や水の中に逃げ込む能力だ。一見何の変哲もない特徴だがかなりの強みである。

初めて欧米人に科学的に認識されたのは、そう、もちろんあの人、スウェーデンの博物学者カール・リンネにさかのぼる。リンネは1758年に出版した『Systema Naturae(自然学体系)』の中でブラジルバクについて記述し、それが彼らバクへの科学的探求の始まりとなった。

中国と日本における伝説的動物としてのバク

中国ではバクの毛皮が病気などの災厄を遠ざけると信じられていた。それが伝説上のバクに似た動物であったか実際のバクであったかは定かではない。

東南アジアにはバクはいるので昔でも高い航海技術を持っていた中国人が貿易で手に入れたり、または中国自体にバクが昔はいた可能性もそうした伝説からは示唆される。

日本ではそうしたバクの話が伝わり悪夢を食べてくれるありがたい動物という印象がかなり昔に定着している。今でも一部の寺院には、ヨーロッパの城のガーゴイルのように木彫りのバクがついていたりする。

なぜガーゴイルのようかというと、昔からそもそも日本にはバクはいないのでマンモスとドラゴンが合わさったような見た目の仮想の獣になっているからだ。実際のバクはカピバラのようにかわいいが、木彫りのバクは結構怖い見た目である。

日本においては今でもバクは悪夢を食べる動物というイメージが持たれている。実際の動物のバクよりそうした生き物として抽象的に知られている感じである。カピバラを描ける日本人はいても急にバクをかいてといって急に描ける人は多分あまりいない。

まとめ

バクの研究はどちらかといえば控えめである。この大きさの動物の中では比較的まだまだ未解明の動物だ。

夜行性の動物であるバクは、比較的弱い視力を補うために、鋭い聴覚と嗅覚を持っている。これは最初に述べたが近い生物のサイとも近い特徴だ。サイも視力が弱いが聴覚と嗅覚は優れている。

国際自然保護連合(IUCN)は、バク5種のうち3種を絶滅危惧種に、2種を危急種に指定している。サイも貴重な絶滅危惧の動物だがバクもとても貴重なのである。しっかり人類が守らないと地球上の奇蹄類の動物は馬一種だけになってしまうことだろう。

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